ISBN:4789728668 文庫 石原 未奈子 ソニー・マガジンズ 2006/05 ¥840

ルーインの新刊も読了〜。
もはや甘々シリーズロマンス出身作家とは言わせないぞ!といわんばかりの作品に仕上げていて、もうルーインってば最高でした!!
あの適度のボリュームで、あの密度。

サスペンスって、ミステリと違って明確な謎解きをしない分、ある程度できれいに真犯人やからくりを提示し、そして話を進めていくものなのですが・・・いやはや。素晴らしい。
全部を克明にせずに、想像の余地を読者に残した状態でルーインは淡々と話を進めていって・・・あのラストにもってきた。
あんなやるせない、何ともいえないラストを書きたい作家パトリシア・ルーインが、全てハッピーエンド!!が主流のハー○クインでずっと書き続ける事は出来なかったのは納得である(^^ゞ
前回の人体実験同様、今回は誘拐された子供の奴隷売買、という非常にショッキングなテーマを扱ったが、ヘビー過ぎず、くど過ぎず、甘過ぎず、テンポよい物語になっていました。
「長期誘拐されて生き残って戻ってきた被害者のその後」という、デリケートな部分にも踏み込んでいるのだが、女流作家らしい細かい描写はあれど、それは決して嫌味ではなかった。
家族を壊された被害者の姉であるヒロイン、エリンの葛藤なども並行して描かれる。
ことのさんが気にいっているポイントの一つは、サスペンスにはかかせない犯人と主人公とのラストの対決がしっかりあったという箇所なのだが、肩透かしくらったような密輸黒幕とCIAとの腹黒い政治的やりとり後に、これだけは単純痛快肉弾戦になっていた事(笑)。
意外に最近少ないのよね、ああいう終わり方の本って(笑)

かといって、ロマンスがないワケではない。
全くといっていい程にホットではないし、エッチな場面もないが(爆)。
何せこのエリン、CIA工作員であると同時に、大学講師でもあるのだが・・・いやはや。武道の達人でもあるのだが、そういう場面はいかんなく発揮されていた(笑)。
お相手のFBI捜査官アレックが・・・これまたデキる捜査官で、、、って、また我慢強いというか、待ち姿勢が堂に入っているというか(笑)。
・・・このコンビ・・・硬派です、かなり(笑)。
でも、二人して仕事をしっかりしているという点が高得点なのだ。
どうも最近読んだエージェントものとかって、仕事丸投げで設定破綻なものが多かったから(爆)、こういう基本的なところで安心出来たりするのよね。

ページ数もそんなに重く感じるボリュームでなく、そのあたりも○。
一気に読むのがよいエンターテイメント色の強い1冊。
そして、ラストまで読まれた方はこれには続編がある事に気付かれたかと。
CIA工作員エリンとFBI捜査官アレックが再び登場する作品『Out of Time』が昨年末に北米で発売されています(^^)
これも、何ともいえないやるせないラストなんですが(ネタばれなんでやめときますが。笑)、エリンとアレックらしいやりとりが絡めてあって(今回よりは仲は進展する。当たり前か。今回が進まなさ過ぎた。爆)、非常に楽しみなんで・・・もちろん翻訳希望なので、その為に今回のこの翻訳新刊が売れますように!(切実)
男性読者にも楽しんで読んでもらえると思うので是非!!(販促中。笑)