ISBN:4789728145 文庫 鈴木 美朋 ソニーマガジンズ 2006/03 ¥798

いやはや。何で上下巻に分けなければならんのか、ってぐらい薄い文庫2冊・・・。
しかも、妙にひらがなの多い(普通に漢字で表記すりゃいいのに、なぜそんな簡単なものまでひらがなに?!ってぐらいのレベル)訳で読みながら凹みました事が多々(^^;

内容は、まぁ、新刊なのであらすじなんかでお茶を濁さず、実際読んで下さい(笑)。
普通、この作品のヒロインの行動(ヒーローの私生活のスクープを狙う理由とか)、HQで読もうものなら絶対抹殺本送りとなっていたであろう。「そんな自分勝手な理由あるかいコンチクショー!!」みたいな具合に(笑)。
しかし、この作品の不思議なのは、こ〜んな行動を起こしたヒロイン、あ〜んな行動を起こした脇役の女性エージェント(ちょっと改心したイライザちっくで、結構お気に入りキャラだったり。笑)、そ〜んな行動を起こした脳が筋肉で出来ていそうな町の保安官、、、その他いっぱい、いや、これだけ負の要素が多いのに、読後感が至って「そんなに悪くない。いや、いいよね、これ」という事なのだ(^^ゞ
キャラクターの書き込みもそんなに深いとは思わない、かと言って浅すぎるとも思わない・・・何といえばいいのか。
作者が冷静に丁寧に淡々と書き連ねていたから、納得させられた、という感じなのか?(^^ゞ >一種の力技?(^^;

ラブシーンはかなりホットで、それでいてストーカー犯のあの描写はマジ怖かった(^^;
ストーカー描写に「食事」を絡ませるというのは本当に恐怖感を煽るのよね。余りに日常的、生理的行為だから。
その昔、ヒッチコックの『汚名』を観た際の、あの砒素入りミルクのグラスを彷彿させる勢いですがな。
犯人の分かりやすさを、更にああ捻るあたりはこの作家、侮るべからず、だわ・・・ああ、どっかの映画のオチを思い出したり(^^;
これ以上語ると完全にネタばれするから、ここでこのネタは置いておきますとして。

いや〜、しかし。
ワタクシ、今まで「災難引き寄せ体質の不幸てんこ盛りヒーロー」って、ジェイミー・フレイザーの為にあるキャッチコピーだと信じて疑っていませんでした(自爆)。
でも、訂正。
このブランドン・カーライルもそれに匹敵・・・いや。身内にされた虐待とその年齢という意味では、こっちのがヘビィすぎました・・・。
あの虐待とアルコール依存症と狂乱の放蕩三昧の果てに、あんな純朴な本質が残っているってある意味、奇跡だよ、彼って。
彼の一挙一動に、何ともいえず砂を噛むような思いをしたり、泣きそうになったり、怒ったり、笑ったりとしたような。
そんな壊れそうな彼を、またヒロインが丸ごと包むような状態なんだよね(高島屋ヒロインか?!爆)。
ラストのヒーロー救出を賭けた犯人との対決場面、あれがあったからヒロインの評価が、前半のイケてなさからプラスマイナス0になったという説も(笑)

他の作品ではなかった、何とも言えない読後感を感じる1冊なことは確か。
ただ、一般的なロマンティック・サスペンスかと聞かれたら「No」とだけ言っておこう。
だって、この話は「いじめられているお姫様を助けにきた王子様」という公式じゃないもん、これ。
「荊の城で過去の悪夢に囚われている王子様の目を覚ましにきた女狩人」ってとこか?(笑)