ISBN:4789727122 文庫 山田 久美子 ソニー・マガジンズ 2005/11 ¥987

読み終わり、かなり呆然と反省しながら夜中に、挙句そのまま原書棚に突撃して睡眠時間三時間ちょいで出勤してしまいました・・・(^^A
反省したのは、「Gone Too Far」まで徹底的にサムとアリッサの部分だけを拾い読みしていたので、今の時点の原書最新刊の主役二人の話をすっ飛ばしていた事(汗)。
つか、Aチーム上司で名前あんなに出てきてたじゃんマックス>いや、キャラ多いのでボケてまして(自爆)

とにかく、今回の本を読んでいて、ブロックマンがかねてよりカテゴリーロマンス(シリーズロマンスともいう。ここではシルエット・シリーズ)の「暗黙の厳禁コード」に違和感を感じていたと言っている事が出てきている。
この本をはじめとするトラブル・シューター・シリーズとラブストリームでお馴染みTDDシリーズを並べると本当に分かりやすいので、本人もそうしていたが。
シリーズロマンスで書けない事を書きたいから、他社でシングルタイトル長編を・・・という意味では、この本は過去2冊と比べると余りにそれが顕著に出ている。
シリーズ内、シリーズの一区切りの意味合い、その上にサムとアリッサが満を持して主役という事で、一番発売を騒がれたのが前出の「Gone Too Far」なら、本人が書きたい事を前面に打ち出してきたターニング・ポイントという意味もあってRWAで圧倒的人気を誇るのが、今回の「Over the Edes(氷の女王の怒り)」だ。
長編でこそ読めた、シルエット以外だから読めた、と思わずにはいられない箇所が随所に光る逸品でございます。

ここから先は、ネタばれ部分をかなり含みます。
読まれていない方、ネタばれが嫌な方は決して読まないで下さい

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確かにこれは、シリーズロマンスものと並べると一目瞭然の違い。
テロリストによるジーナに対する集団レイプ、主要人物の一人ヘルガのアルツハイマー病の病状進行の描写、そこまで明確に書かれなかった「仲間である以上に確固たるもの」としての軍隊階級によるサムとワイルドカードのくだり、意にそぐわない女の妊娠のせいで本当に愛する女に別れを告げるサムなど、絶対HQではそこまで書かない、いや書けないってところまでブロックマンが踏み込んできたように感じた。

きっと、シリーズロマンスならジーナがレイプされる寸前に無敵のSEAL部隊が助けにきて未遂に終わるだろう。
ずっとやりとりをしていたテロリストの一人が友情にめざめて彼女を助けてくれるかもしれなかった。
しかし、実際はそうではなかった。
自分を犠牲にして、他の乗客を守った彼女に運命は残酷なまでの結果を与えている。
そして彼女は分かっている。ハイジャック事件から、忌まわしい暴力から生き残った故に、「哀れみ」と「蔑み」という次の精神的暴力が始まる事を。
それでも彼女は、自分の足でその忌まわしい場所から、顔をあげて歩いて去る事を選んだ・・・あそこは本当に胸が痛くなった。

ブロックマンの描くヒロインは本当にあらゆる意味で「強い」のだが、あのジーナのくだりはそのまま、ロマンス小説にあるヒーローの描写に近いものを感じた。
FBI捜査官のマックスが、そんな彼女と共にこれから歩む道は決して平坦ではないのだが、極限の状況から出遭った二人の今後が気にならない読者はいないであろう(もっとも、ブロックマンのこの時点で二人の話は考えていても、最終結論は第二シリーズ・・・と長丁場に考えていたのは明らかだな)。

サムの、メアリ・ルーを妊娠させてしまったくだりは特に、ブロックマンが常々書いてた避妊に関するシリーズロマンスの扱いに対するアンチテーゼじみたものを少し感じた。
よくあるのが、実は別の男の子供だったのを元・妻に騙されていたが、子供には罪はないし・・・という心優しいヒーロー(しかし、ひらたく言えば間抜けヒーローともいえるこのパターン。汗)のパターン。
しかし、ブロックマンはここで物語中「2回」も検査させて、サムの子供という事を明確にさせた。
いくらアリッサに無視されていた期間にヤケになって、いっても彼がそのメアリ・ルーと関係を持ったのは事実。更に、彼が決して避妊を忘れなかった事をセリフに絡めて書き加えている。
そして、逃げもせず隠れもせずにアリッサに対峙させている。
他の女と結婚する、子供に対して責任をとる、と己の運命の相手アリッサに言っているのだ。
そのバカなまでの潔さが、男前(笑)アリッサの心に響く。
それが証拠に、これが二人の終わりではなかったのだから。
彼らは結局、二年ばかり回り道をするのだが・・・この回り道が必要だった、それがブロックマンの判断だった。
この形での回り道をシリーズロマンスの編集が許してくれるとは思わないな、やっぱり(^^ゞ

そういう意味では、前出の二組と比べると今回の主役のスタンとテリー・ハウは、おっとりした王道的ロマンスと言えなくもないのだが。
心に傷を負ったテリーを、不器用にまるごと(しかもかなり勘違いに。もしくはとんちんかんに。爆)包み込む、某お姉さま風に言うと「高島屋くん」なスタンという図式(^^ゞ
しかし、悶々していて・・・寸止めでかなりツボなんだな、このスタン(笑)。
何故かいつもは脇役カップルに心和むのに今回はこのラブラブな主役二人にまったりほっこり(^^)

そんな二人に挟まれ、今回はボケに徹したマルドゥーン・・・ボケててかわいいのだが、いかんせん今回は話が濃ゆすぎて存在が薄かったわね(笑)。
そして・・・今回のアカンたれ大賞(爆)なカンジの、ことのさんご贔屓のワイルドカード(^^ゞ
メソメソ泣くわ、器物破損だわ、上官侮辱だわ、いいトコないかもしんないけどあうあうあうー。好き好きー。
スタンも言ってくれてるもんっ、おっきなハートを持ったかわいいオタクくんなのよ!!(爆)

そんなこんなで次回はワイルドカードがインドネシアでラブラブ・ズンタッタ〜♪♪な「Out of Control」ですな。
昨夜から思わず引っ張り出してきて読んでますがなアハハ(^^ゞ
久々に読んだら、ヒロインの名前見て、某国の男子水泳選手を思い出したり(←似てません?なんとなく。爆)
そして、Aチームに移動したアリッサと会話しているのがマックスだと今頃気付きました(汗)。
ひっそりことのさんはジュールズご贔屓なのさ(^^)