初翻訳になりますアリッサ・ジョンソンの作品。
おーい! 乙女思考男子達きたでーっ!!(爆)

いや。冗談でも何でもなくて。
乙男(オトメン)じゃなくって、乙女思考な男子が2人いるんですよ、この話。
ハヴァーストン家の兄弟です。
片方はヒーローです。片方はエライ侯爵サマです。
でも、残念なぐらい乙女思考です。お相手の彼女たちの方がある意味、漢(おとこ)です > ミもフタもない(爆)
ですが、そこがこの作品の美味しいところですので!よろしくですよ!!


お話は、その 乙女思考男子 ハヴァーストン侯爵家のお家騒動から始まります。
先代亡き後、新しく侯爵位を継いだ長男ルシアンに呼ばれた次男のギデオンはある事を任されます。
それは先代の後妻で、2人の継母であったレディ・イングスリー侯爵未亡人が長年、侯爵家から多額の金を盗んでいた事から、いろんな事が次々と隠蔽、でっちあげなどされていて、その中に「ミス・ブライス」なる人物の後見人としての責任が侯爵にあったこともありました。
てっきりでっちあげかと思いきや、彼女は実在の人物で親を失った際にその責任の面倒を避けたい侯爵夫妻に辺境の地にある田舎屋敷に放り出されていました。
諸悪の根源である侯爵未亡人は逃亡し行方知れず。
とにかく、12年前に自分の最愛の恋人が行方不明になった裏にもこの継母が関与しているに違いない!と、継母を追う気満々の兄に任されたのは、その謎のミス・ブライスのところに出向き、その状況を把握し対処すること。
彼女が正しく被後見の手当てを受け取っていたのか、また継母にそれらを奪われていたようなら、それを謝罪して是正することでした。
戦争から戻って以来、心を閉ざし仕事もせずに引きこもっていたギデオンの気分転換にもなる、とスコットランドに送り出されますが…というものです。


乙女思考兄ルシアン(笑)が念仏のように「ローズは絶対に生きている!見つかる!!」と最愛の彼女の事を諦めないポジティヴさの勢いが眩しい冒頭。
ぼんやりしているネガティヴな弟は、スコットランドでいきなりズボンを穿いたヒロインであるミス・ブライスことウィンフレッド(フレディ)に銃を突きつけられる始末(笑)。
しかし、何が私がこの話が好きかって、この序盤からのギデオンのマイペースっぷり描写です。
まぁ、つまりは夢見る夢男くんなワケですよ(戦争によるトラウマで奈落の底に穴を掘って生活している割に、です)。
見知らぬ少女によるヒステリックな苦情の出迎えとかはなるべく考えず、まぁ遠路はるばるいらしてくれましたわねラララ~♪♪ぐらいの妄想をしていたあたりが、タイプは違えどあの兄にしてこの弟といったところか(笑)
戦争で人が変わってしまい、自暴自棄になって破滅的破壊的になってもおかしくないのに、実に訥々としていて他人を傷つけるような事をしないのがこのギデオン。
「金を出してやるんだから、言うこときけよ」と言ってもおかしくないぐらい、本当に血の繋がりも縁も所縁もない兄の被後見人に対しての、あの温和な紳士っぷり。
エセではありません。爵位はありませんが、気位と心意気はまさにゴージャスな紳士ですよ!

そうなんですよ。
ギデオンもなんですが、フレディもネグレクトの末に辺境の地でやっとこさ小さな幸せを見つけた苦労人ヒロインにも関わらず、何と裏表のない事ったら!
あんな貧乏生活にもかかわらず、ガッツにあふれ、自分は我慢して(その自覚もあまりないぐらい)まわりの人たちに尽している頑張り屋さんでした。
それにウィットに富んでいて、必ず去勢されて売りに出される牡牛すべてに、侯爵であるルシアンの名前をつけるブラックっぷりとか(笑)
実際、読めば読む程に、ギデオンではありませんがこのフレディを笑顔にしてあげたい、幸せにしてあげたいという気持ちになります。
傷ついたギデオンが、この天真爛漫なフレディによって癒され、笑顔を取り戻し、恋に落ちるのは必然かと思います。
特にお気に入り場面は、町に買い物に出かけるギデオンに、フレディが彼に頼んだパン屋さんのペストリーのくだりです。
たかだかペストリーですら、極貧生活では買う事も侭ならず、うっとりしながら外見だけをいつもショーケースごしに眺めて想像するだけだった彼女が「あれだけ大きいんだから、中には何か詰まっていると思うの。ジャムじゃなくて、カスタードクリームだといいんだけど」とか言った瞬間ったら!
もう、なんか涙ぐんでしまいましたよ、あまりのかわいらしさとストレートさに!!
あれはギデオンでなくても、たとえ中味がジャムだったとしても掻き出してカスタードクリームに挿げ替えると豪語するわ私でも!! > 幸いカスタードでしたが(笑)
(しかし、あのイケメン貴族のギデオンが、シェフの嫌な顔をガン無視してペストリーからジャムを掻き出している姿を考えただけでご飯三杯はいける!爆)
また、そのペストリーが届けられた後のフレディの顛末が…笑えるの何のって!
可愛すぎるでしょフレディってば!!(萌)

舞台はスコットランドの田舎から、社交界シーズン真っ只中のロンドンに場所を移しますが、居心地の悪いロンドンですらもフレディは可愛いまんまです。
そして、そんな彼女への自分の気持ちに向き合えない、過去を乗り切れないギデオンとのやりとりが切ないです。
幼い頃のフレディの家庭教師で、親友のリリーと共に社交界を楽しむためにやってきましたが、ロンドンにやってきていろんな事に気付くのもまたお約束の展開。
あのスコットランドの田舎の家は、自分にとっては故郷でいるべき場所だけど、それがリリーにも当てはまるかと聞かれたら答えられないようになってしまっている事。
益々ギデオンとの身分の差を感じる事。
後半になり、ロンドンでのお目付け役としてギデオンの伯母レディ・グウェンが、そしてギデオンの兄であるイングスリー侯爵ルシアンが登場した事によって物語は急加速してクライマックスに向かいます。


ここからは御自分で読んでみて下さい。
皆さん、予想はついていらっしゃるでしょうけど、私が冒頭から「乙女思考男子」と連呼している由縁がこのクライマックスのハヴァーストン兄弟のあれやこれやで分かりますからっ!
本当に、読んでて床ゴロゴロ転がりますよ?! > マジ!!

ああ、とってもいいロマンス作品でしたよ。
久し振りにキュン死するかと思いましたよ、ええ!!
エロマンスばかり読んでいて心が汚れてしまったわどーしよー(爆)とか仰るそこのアナタに是非ともリハビリでお勧めしたい(真剣)。
山羊のクレアですら名わき役ですからねっ!!
読後、すごくふわふわと幸せ気分になれるんだからっ!!
こういうホロリときてきゅんきゅんくる作品を書いてくれる作家さんなら、新刊大歓迎でございます。他の作品も読みたいわ~♪


+余談+
で、この作品を読んでいて「いやーっ!乙女思考男子きたでーっっ!!」と叫び倒していて気付きました。
あのさ、スーザン・ブロックマンのTSSシリーズ読んでる人になら、この符合に気付きません?
かのシリーズの乙女思考ヒーローの2トップといったらっ、ワイルドカードとマックス・バガットですよね?!(当社調べ。爆)
この2人が主役の話の翻訳者が…今回のこの本の翻訳者の阿尾正子さんと気付いた時に…3作品並んだ時に…震えたよ私は(勝手に。笑)。
もうね、私は今日から阿尾さんのプロフィールのところに「 乙女思考ヒーロー作品を得意とする 」と勝手に脳内で付け加える事にしましたっっ!!( ̄▽ ̄)ノ
意義申し立ては…ご本人以外は認めない事にします(てへっ☆)

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