日本でもお馴染みの人気作家三人による短編集です。
3本とも偶然(?)にも、既に翻訳されている作品のスピンオフというところで、関連作品既読の方は要チェキかと。


リサ・クレイパス作品は、かのボウ・ストリート・シリーズでもお馴染みドクター・リンリー(若先生)のお話。
お相手は、あの(!)デレクとサラ(『あなたを夢みて』ライムブックス刊)の娘リディア…この時点で「くっそ!あんな男に愛娘を持ってかれるなんてくっそ!!」とかいうデレク父ちゃんという設定なので、それだけでニヤニヤ出来ることが分かる核心犯な短編とも(笑)。
読んでもらってお分かりなように、主役2人よりもイチャついている場面が両親のが多い、とかいう…(^^ゞ
ツンデレ医者 対 ツンデレ発明家っ娘 という面白いキャラ設定ながら、いかんせんページ数が足りなさすぎてさらっと一読して終わり、という残念な結果に。
三人の作家の中で一番ページ数が少ない作品がクレイパス、というのもなぁ…目玉商品なのは分かってはいるけど。
あー、商売上手なクレーブン家の設定なんて、箇条書き説明でブレイクスルーなカンジざましたよ。
そうですな。豪華な食材が揃っていながら、手際がイマイチで出来上がった料理が予想よりも量が少なく食べ足りない上に、どっか味がピンボケだったといったところか!(笑)
そうだよ、多分、脳内予想のハードルが高すぎたんだよ! 食材(キャラクター)の並びだけ見て決め付けたから!!(爆)


キンリー・マクレガーの作品は、先日翻訳されました『薔薇の騎士は白馬に乗って』でも登場しました、前出作品のヒーローの異父弟サイモンのお話。
これは彼の設定そのものが、いい意味でも悪い(?)意味でも個性的な友人連中の間を取り持ち、彼らをサポートするバイプレーヤーというものからきていて、そこから違和感ないお話を構築しているカンジがしました。
それでいて、ボリュームに見合った構成でしたよ。あれだけの登場人物を、それぞれ見せ場らしきものを作って上手く捌いている(笑)。
しかし、サイモンよ…脇役の時よりも…イケメン騎士ながら、あまりにマメで地味で苦労症だったわね!!(爆)
ヒロインのケンナは、ケニヨン作品お馴染みの元気印で健気で、傷ついたヒーローを包みこむような女性です。
文通もの、手紙ものが好きな私ですが、これはそこまで手紙に頼っていなかったのも◎。按配は大事なのだ。
ちなみにここに登場するシンとケンナの友人カレドニアの話は、ダークハンター・シリーズ(シェリリン・ケニヨン名義。ラズベリーブックス刊)の中でヒロインが読んでいる本でもあります > どうでもいいマメ知識(笑)
コンテンポラリーでパラノーマルな、かのダークハンターの世界では、キンリー・マクレガー名義の作品がこんな感じでいろんなところに笑える形で出没します > 本当にどうでもいいマメ知識(笑)
この短編をきっかけにシンと、そしてストライダーのお話が翻訳されますように! (そして売れて売れて売れまくり、作家買いよろしく絶賛放置プレイされているダークハンター・シリーズの残りがどこかの心優しい版元さんに救済されますように。南無南無)


最後はジュリア・クインの短編。
『すみれの瞳に公爵のキスを』『求婚のワルツは真夜中に』『野に咲く乙女に口づけを』(全てラズベリーブックス刊)の関連作となりますが、圧倒的なまでのストーリーテラーっぷりが、このボリュームだからこそ如何なく発揮されておりますよ!
元来、面白い長編よりも面白い短編を書く方が難しいのでは?と思っているので、この作品の出来の良さには唸りました。
読み足りないとかなく、かといって情報不足でもない。
キャラクター造詣が中途半端とかもなく、ちょっとした場面で見せ場が用意されていて、それがまたいいんだわ!
個人的には、ヒーローのネッドが、彼の妹、従妹、婚約者から逃げるに際し、まるで競馬のように順番をつけ説明する冒頭から笑いこけていました(笑)
あと、ツーと言えばカー、割れ鍋に綴じ蓋、夫婦漫才的なネッドとヒロインのシャーロットの丁々発止っぷり(笑)
とどめは、あの詩の韻を踏むネタですけどね!
原書でのときはささーっと流したけど、こうやって日本語にしてもらうと馬鹿馬鹿しさがギュッと凝縮されていて、腹抱えて笑っちゃったよ!
あのダジャレに近いのを読んで、パーシヴァル・ワイルド『探偵術教えます』(晶文社刊)を思い出しました!(あれは韻でなくスペルミスでしたが。笑)
とにかく、ラブラブアイウォンチューヒーローで、読んでてニヨニヨ笑いが止まりません。


そんなこんなで、3本とも及第点はクリアし、更に高得点叩き出しました的な、ナイスな短編集でした。
私が好みで順位を付けるなら、こうかな。

ジュリア・クイン > キンリー・マクレガー > リサ・クレイパス

ただし、クレイパスに関しては「読み足りない」というそれに加え、リンリー先生が主役なのにデレクに食われていた哀れさが反映とも(^^;
最初からデレクの後日談、として読まれるデレクファンの方はこの範疇ではないかと思われます(笑)

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