ジェイン・アン・クレンツのヒストリカル執筆名義、アマンダ・クイックのアーケイン・ソサエティ・シリーズ新刊、読了。
シリーズ愛読者うっしっし、クレンツ読者更にうっしっしの一冊。

アーケイン・ソサエティものとしては、過去編2冊目。
しかし、そこはクレンツが各名義を駆使して書いているこのシリーズの、クロスラインものの醍醐味。
実に読んでいて、現代編(クレンツ名義分)に通じる、もしくはルーツの解説、謎解きめいたエピソードや設定が次々と登場するので、それだけでもう満足しちゃうところだ(笑)。

今回の主役は水晶を操る超能力者リオーナ。
彼女はかつて、母親が所有し、盗まれた不思議なパワーを秘めた水晶「オーロラ・ストーン」を探し、とある屋敷にたどり着いた。
しかし、そこに同じく水晶を探す者が現れた。
彼の名前はサディアス・ウェア。
この催眠術を使う超能力者は、かつてはアーケイン・ソサエティ所有だった水晶オーロラ・ストーンを捜し求めていた。
この偶然の出会いから、二人はオーロラ・ストーンを狙う邪悪な存在から狙われる事になるが・・・。

と、まぁ、よくあるクレンツものの出だしだが、いやはや。
ミもフタもない言い方をするなら、 序盤でいきなり敵の毒ガスにやられたうっかりヒーローだよサディアスってば!(笑ってはイカンのだが、それ以外に言い様がない。笑)
毒ガスから救ったリオーナのDekiっぷり、有能っぷりもクレンツの書くヒロインの典型的パターンなのがまた嬉し。
しかもリオーナ、ワンコ飼い ですってよ!!(この時点でクレンツ愛読者、感涙。笑)
そのワンコがどう見てもオオカミ、しかもたまに ヒーローより有能くさく(爆) (実際、クライマックスで敵の組織サード・サークルに囚われたリオーナを救出するに至り、このワンコのフォッグ、「俺様についてきな!」って勢いでサディアスを彼女の元に導く。かっけーよワンコ様!!爆)って、それでいてサディアスとオス同士の友情(?)なんかもあったりして、ひゃひゃひゃー!!
サディアスの大伯母様のヴィクトリアも、ワンコの遠吠えに言及したりと、今回はワンコ好きツボを尽く押えた感が(笑)。
個人的に大好きなのは、深夜にこっそり行動を起こそうと思っていたサディアスを発見したフォッグが、寝ている飼い主リオーナを起こし、その隣で前足2本を窓枠にちょこんと置いてジーッと窓から家政婦よろしくガン見している場面(笑)。
つうか、ワンコにガン見でバレる隠密行動をとるヒーローって!!(爆)

何度も言うように、クレンツ作品というのはノーラ作品と楽しみ方が似ている。
どっかで見た事あるような設定のキャラクター達が、どっかで読んだような話の展開を達者に乗り切り、オシャレで小気味いいテンポでロマンスとか、家族とか、友情とかの良さをバランスよく味わうのだ。
それをマンネリと呼ぶなら、それでいい。私はそのマンネリさを手堅く心地よい芸風と見なしているから。
でも、そういう点を鑑みなくても、この巻でシリーズ全体を、既存の設定の数々をうまくつないだなぁ、とクレンツの茶目っ気ある達者さに拍手もん。
この作品だと、リオーナの先祖は、アーケイン・ソサエティの中では裏切り者と烙印を押された女妖術師。
ここは現代版ソサエティでいうとレイン(『消せない想い』)と立場は同じ。
そして、サディアスは最初の時点では単なるソサエティの調査員という触れ込みなのに、よくよく聞いたらジョーンズ一族でシルヴェスター・ジョーンズ直系の子孫というのは全くもって、現代版のジェイク(『許される嘘』)そのもの。
それどころか、今回の一冊にて、過去編の1冊目『運命のオーラに包まれて』では疑念で終わっていたものが、確信に代わりました。
ケイレブ・ジョーンズ、まさに現代版のファロンの直系の先祖と断言せずにはいられませんよ?!
ヴィクトリアン時代にファロンが紛れ込んでるのか、と思いましたわケイレブの発言の数々に(笑)。
前作で登場したヤヌスクラブの二人、アダムとピアースもしっかり登場し、過去編のキーとして今回も活躍。
現代編で「夜陰」と呼ばれている敵対組織の原型とも思える組織が、まだ小分割されている様とか(原題はそこからきている。「第三分会」)、現代編ではすっかりお馴染みになったソサエティの縁結びシステム「アーケイン・マッチ」の設立に至ったところとか、ソサエティと切っても切れない調査会社「ジョーンズ&ジョーンズ」がケイレブによって設立された理由とか、とにかくシリーズ愛読者にはこの一冊は全てをつなぐリング的存在として押えてほしいですね。

リオーナもサディアスも大好きだし、ヴィクトリア大伯母様もケイレブも勿論良かったんだが、やっぱり今回のツボはワンコのフォッグだったかも(笑)。
お話としても面白く、特撮チックなクライマックスのリオーナの圧巻の反撃とかワクワクして読みました(ヒーロー到着前にカタつける雄雄しいヒロインで。笑)。
ロマンスも、ここんとこのクレンツ作品の中ではドラマティックなエロさがあってとっても満喫、家族ものとしてもグッジョブ!
いやー。いいもん読んだ!って気分です。
しっかり伏線らしき場面も幾つもまかれていて、今後も楽しみだわ。
早くケイレブの話、読みた~い!!

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