久し振りの翻訳ミステリ新刊買いが、これ!(笑)
ヒストリカル・ロマンスの始祖ジョージェット・ヘイヤーによる英国本格ミステリ!

・・・笑った。
最初から最後までとにかく笑った。
何でこれが、このサプライズ・エンディングものが自分のスタイルを崩さずに書けるんだ、ヘイヤーって(笑)。
ミステリ読者として最初、穿った読み方をしてしまったんだよね。
ほら、晒し台に両足つっ込んだ紳士の死体ってのに、横溝的見立てキターッ!!とかさ(笑)。
そこは、読んでもらえば分かるんですが。

とにかく、この登場人物たちの饒舌で、しかも大半が斜め上かっとび系なのがいかにもヘイヤー作品。
特にヴェレカー一家、配線違いの変人だらけ(笑)。
画家のケネスと妹のアントニアは、異母兄が殺された事によって事件の渦中に放り込まれているんだが、そこでテンプレな巻き込まれ式ミステリになっていないのが何ともはや。
どっちかというと、この二人の配線が奇妙すぎ且つマイペースすぎて周囲の人間が否応もなく巻き込まれているフシが(爆)。
もうね、全てがおかしくって、こんな事件を、いや。この一家に関わってしまった担当のハナサイド警視に軽く同情すらしますね!(笑)
そう、ここでは強烈すぎる個性の渦中の人間たちが狂言廻しのような言動で読者を煙にまき、唯一(?)の常識人である(いや、この人も十分ブラックで斜め上なんだが、いかんせん他のメンツが凄すぎて普通に見えるマジック。笑)一家の従弟にて弁護士のジャイルズを素人探偵に配し、ハナサイド警視はそのジャイルズを見守り、サポートし、そして一緒に事件を解決していくというスジ。
ヘイヤーゆえに、しっかりロマンスもあって、そこをニヨニヨ楽しみつつも、コージーのような、本格のような独特の空気感のある作品そのものに舌を巻きました。

事件そのものは単純。
ただしその単純さゆえに、我々読者が失読しそうなところを何と上手についてきたのか。
そう、犯人はきっとこの人なんだろうなー、という人。
予想を裏切らないというか(笑)。
そこをね、あの氾濫する軽快且つブラックユーモアに溢れた会話の数々の中に惜しみなく散りばめられたヒントを拾っていくんです。
あっけない、でもあっというラストをお楽しみ下さい(本当に出血大サービス状態です。笑)。
「あんだけ出してきた胡散臭い設定は何だったんだ?!」的なサプライズ・エンディングとも言えますが(爆)。

いやー。実に楽しかった!
キャラクター達も強烈でクセ者揃い、犬までナイス!(笑)
部長刑事のヘミングウェイさんに至っては、ミステリものでの定番ポジション、横溝でいうところの「よーし!犯人はコイツだ!」的な、古畑でいえば今泉くん。そこすらミステリ読みにはたまりません(笑)。
このハナサイド警視シリーズ、続きも翻訳されるんですってよ?!
んまぁ、素晴らしいわ!!
今度はニコチン毒殺人とか・・・エラリアンとか涙目もんね。ニコチンよ?!
しかもクリスティばりのロマンス名手ばりの仕掛け付きとか。
古典本格ミス愛好の紳士淑女の皆様、wktkして翻訳を待て!! (キリッ


+余談+
ただね、一箇所だけ、一箇所だけ20世紀、1935年作品としては残念な翻訳があったんですけどね。
時代背景、時代設定からは、その訳はない(キッパリ
あそこだけだったから、気付いていない人も多そうだけど。

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