今年、翻訳を一番楽しみにしていたかもしれない、ヘイヤーの名作。
読み終わって、そしてまた読んで、更に読んで・・・と終わりが来ない、抱腹絶倒の変人大集合、じゃじゃ馬ならしならぬ放蕩者ならしの最高傑作(爆)。

褒めてるんですよ?!
めいっぱい褒めてるんですよ?!(爆)

『愛の陰影』から四半世紀ばかり経過。
エイヴォン公爵ジャスティンとレオニーの間に生まれた愛息子ドミニクくん。
生まれながらにヴィダル侯爵の地位を持った上、あの両親、その上にあの叔父、あの叔母とあっては・・・っていうか、よくぞ成人まで生きてたなコイツ!ってのが正直な感想(笑)。
父親に負けず劣らずの極悪な放蕩者、という世間の評判だが、とどのつまりは両親の血を濃ゆーく受け継いだだけでは?!(笑)
冷静なジャスティン父ちゃんではなく、瞬間湯沸し器 情熱的なレオニー母ちゃんに似たのがありありと(^^;
冒頭の、舞踏会に行く途中でドミニクが追いはぎにあった絡み場面にこの物語でのアラステア一族の全てが凝縮されているようで非常に読み手を引き込みます。
さっさと追い剥ぎを殺して、死体を放置プレイして舞踏会に行っちゃったドミニクの「だって、舞踏会に死体を持ってっても役立たないじゃん」という理屈もすごいし、母親と同じ思考回路なのも笑うんだが、それ以上なのが父親。

「さっさと殺したのは大変結構だが、(死体を放置した件は)締めがだらしない」

・・・もうね、ここだけでも10回ぐらい読み返したわ私!(核爆)
ブラヴォー!ジャスティン父ちゃん!!(爆)

そんなドミニクだが、傍若無人が祟り、とうとう父親に最後通牒を突きつけられて国外退去させられる羽目に。
ここもまた・・・えーっと、笑いが止まらないんデスガ(^^;
普通は、家族一族の名誉やら評判を守る為に放蕩息子を放り出すのが定番。
しかしこのアラステア家に「普通」はありえなく、公爵が息子を国外に放り出す理由は、自分そっくりな放蕩っぷり乱暴っぷりそのものではないのだ。
人が死のうが、一文無しになろうが、ゴシップになろうが、そんな事はどうでもいい。
ただただ、愛する奥さん(レオニー母ちゃん)を困惑させ、心配させた。それのみ。
つうか、20数年たってなお、どんだけベタ甘なんだ、この バカップル 夫婦!(呆)
レオニーはレオニーで、ドミニクが公爵そっくりで悪魔呼ばわりされている事に「むしろ私に似てるからなのにっ!」とか、頓珍漢に怒ってるし(^^ゞ
ママン大好きのドミニクは、父親に逆らうでもなくフランスに行く決心を・・・まぁ、そこで普通に行かないのが彼なんだけど。
その時に付き合っていた、頭の悪い美人、あ、いや。頭の弱い美人、あ、違った。中味がない美人で中産階級の娘ソフィアを連れてって旅のお楽しみでもすっかー、とか呑気な目論みをば(笑)。
それを阻んだのが、ソフィアの姉にて未亡人家庭の柱ともいえるメアリー。
どうせあんな放蕩者、結婚なんか考えてくれてないんだから、ここで妹の評判を守らないと!と暗躍。
策を労じて密会現場に行ったはいいものの、そこがまさかのフランスの旅の為の港!
騙されてカーッと頭に血が上ったドミニクに脅されて、あれよあれよと船に乗せられる羽目に!

船酔いでリバース、という、ヒロインにとって屈辱的なところをドミニクに世話を焼かれている時点で「あ、この人、思っているより・・・」と思っていたところ、うっかり(?)彼をピストルで撃つ事に(笑)。
・・・ここからが、何というか、トップブリーダーも驚くメアリーのしつけ教室全開(笑)。
何か百戦錬磨の暴れん坊ドミニクが、メアリーにいいようにあしらわれている様が・・・超カワイイのよ!
ひどい間違いをしてしまったのと、メアリーの祖父が公爵の友人にて著名な将軍なのもあって評判を守る為に結婚を申し込むにもあっさりソデにされてしまったり、でも諦めずイケイケゴーゴー!!だったり(笑)。
いいよー、ドミニク。
駄々っ子っぷりが、まぁ、何とかわいい!
メアリーは、乱暴な言動の裏に彼の本来の姿を感じ、段々と惹かれていってはいるものの自分と彼との身分違いをしっかり自覚していて、自らの気持ちを抑えて求婚を断り続ける事に。

そんな二人の不器用なやりとりに、斜め上上等!!なアラステア一族が絡むものだから・・・は、腹が痛い!
変人まみれの一族(雇い人まで変人揃い。笑)の中、ファニーさんの息子(ドミニクの従兄)ジョンの余りの普通さ堅実さが逆に際立っていてその滑稽さに笑わずにはいられない(笑)。
こんな一族を脅迫しようとした時点で、メアリーの愚かな母親の命運は尽きていたとしか(^^;;
ええ、何せ息子を溺愛するレオニーの怒りに火を注いでしまった(爆)。
ジョンの妹にて同じくドミニクの従妹ジュリアナの恋愛を絡めてのドタバタの中に、そんな怒髪天状態のレオニーが渡仏、お供に狂言廻しな義弟ルパートとなれば、もうワクワクよ?!(恋愛ものでありながら、どんだけー。笑)
また、すっかりしつけられた感があるドミニクのワンコっぷりが細かくネタで、ジュリアナの婚約者に連れられて身を隠したメアリーを追うところでも、男性側でなく「僕のメアリーが(逃亡の)指揮をとってるに違いない」と変なところで誇らしげだったり(^^ゞ

このドタバタ劇をどう読むかによって、この作品を受け入れるかどうかが決まるかな?
ただ私は息つく暇ないハイスクリューボールコメディを、この古典でやっていて、全然違和感ない事に感動せずにはいられないです。
何よりも、クセ者 救いがたい変人 揃いのアラステア一家を落としまくるメアリーのDekiヒロインっぷりが天晴れ!
というか、クライマックスのジャスティン父ちゃんとメアリーとの会話の何とハイスペック且つハイクオリティな事よww
マイペースな父ちゃんの、息子が懐中びんのジンをメアリーの喉に無理やり流し込むぞコノヤロー!と威した件についての「洗練されていないやり方を遺憾に思う」という評が吹かずにはいられないが、そんな父ちゃんですら舌を巻く彼女の放蕩者ならしっぷり!

「彼を扱うのは簡単なんです・・・やり方さえ心得てさえいれば」

このメアリーの台詞に、父ちゃんの頭の中では「息子の 見張り番 伴侶キターッ!これでレオニーの心痛が減る!!」とファンファーレが鳴ったに違いない(所詮、嫁至上主義バカ。爆)。
しかし、20数年、親でも手を焼いた暴れん坊ドミニクを、あそこまで飼いならすメアリーもすごいけど、やっぱりラスボスは父ちゃんだった(笑)。
何というか、放蕩者ならしヒロインものって数あるけど、それはヒーローがメロメロになって自主的に改心するってのが大半なので、これだけ強制的且つ段階的にしつけていくってのは珍しいかと(^^ゞ
そんなこんなで、最初から最後まで笑い続けて終わった、最高に斜め上な一冊。
たとえ読者を選ぼうが、前作の退廃的なムードが木っ端微塵だろうが、変人率高かろうがとってもお気に入り!
やっぱりヘイヤー、私にとってははずれないわ。
これからも細々でいいので翻訳続けてほしいです(-人-)

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