ソフトバンクから出ましたテッサ・デアの初翻訳にてデビュー作、読了。
何というか、モゴモゴ。

このテッサ・デア、RITA賞ファイナリストにて、AARの新人賞受賞者。
名前だけは知っていたので、今回の翻訳が決まり丁度、あらすじも好みだったのも手伝い「では、読んでみよう」となりました。
読み始めると、サクサク読めるんですが・・・どうも、奥歯にモノの挟まったような違和感を若干感じてならなかった。
理由はどこかって?

そりゃあ、このヒロインでしょうww

幼い頃から兄の友人トビーに恋心を抱いていたルーシーだが、そのトビーが社交界でも有名な令嬢ソフィアに求婚しそうだと知り、大慌て。
今まで少年同様に扱われていたルーシーだが、トビーに一人の女性として見てもらおうと、兄の旧友の一人ジェレミーを練習台として付き合わせる事に。
それは、いきなりのキスから始まったわけで・・・そこから、ルーシーとジェレミーの関係は、意外な方向に転がっていったり・・・。

いや、面白いんだよ。
いろいろ画策して、令嬢ソフィアに対抗してもんぞり返るような絵を描いたり、釣りの筈がトビーの気を引こうとして土座衛門になりかけたり、と。
でも、言っていい?
快活な怖い者知らずとかいう設定の割に、何故かこのルーシー、自分からトビーに告白しないんです。
外見やら言動やらを女性らしくして、トビーの自分への視点を変えさせようとする事に邁進して、周囲が見えてないフシすらあるんだもんルーシー。
自分からさっさと気持ちを告白しないのは臆病なのか、はたまた自分からでなく男の方から言わせようとしているのか・・・後者のように思えたのはことのさんだけか?!(笑)
上から目線すぎません? あれだけの勢いなら、当って砕けろ、なのに自分が可愛いのかそんなところはしっかり守りに入ってたり、さ。
ああ、駄目なんです、そういうの。
しかも、このルーシー、ジェレミーと結婚してからの言動が尽く・・・しょっぱい(~_~;
動物は分かる。見知らぬ土地に、結婚した相手の所領というアウェイに乗り込む際に可愛がっていた犬や猫なんかのペット、愛馬を引き連れて行くのは分かる。
今まで育った屋敷と変わらないものを持っていけば心強い、と思うのも。

でも、徘徊癖のある痴呆症の叔母を連れて行って同居させるって、何事?!

見知った場所なら、徘徊しても発見出来るけど、全く未知の土地よ?!
しかも、気心知れた使用人でない、全く知らない婚家の使用人が待ってる新しい屋敷によ?!
ありえないだろ、それ!!と思った。
自分の兄ヘンリーが呑気屋だから、叔母の世話は私が・・・って、すごいエゴだと思ったわ。
少なくとも、義務と思っている兄と比べるとルーシーのが確かに叔母さんへの愛情はあるかもしれないが、そういう事をまずは世帯主で夫でもあるジェレミーに相談すべきなのに、事後承諾ですよ?!
ペットじゃないのよ、人間なのよ!
責任のレベルが全く別次元の人間なのよ!!
しかも高齢の、お金がかかる病人なのよ・・・信じられない。その思慮の無さが。
多分、ここが一番このヒロインに引いた部分だと思う。
そのくせして、夫から渡された高額の小遣いに関して、使い道が思いつかないとか腹を立てるから呆れるの何のって。
アンタが勝手に連れてきたんだから、付添人雇ってその給金払えば?とか冷たく思った(笑)。
学校にも行った事なく、男の子同然に兄や兄の友人たちと腕白に育ったという設定から世間知らず、と言いたいのかもしれんが、私に言わせてもらえば「これなら、家族にべったりで友達いなくて当然かも」とか毒満載(爆)。

そんなこんなで、この話を読みきった、いや、むしろサクサク読めた理由もただひとつ。
ヒーローのジェレミーに尽きます(爆)。
こんな、こんな 寸止め大魔王 とは!(笑)
いやはや、本当にこの女はやめろ、と言ってたんだが(本に向かって。笑)、どんだけ大きな心で愛してるんだ、彼女を。
あれだけの幼少時の、成長時のトラウマ三昧、棘のような記憶の蔓延る所領をも抱えて・・・ねぇ。
愛する事に臆病にもなるっていうのに、あれだけあからさまなツンデレさを出す?!出しちゃうの?!みたいな。
もう「愛している」って言葉を口に出せない件の、あの怯えとか、苦悩とかの描写が絶妙でヒリヒリするんだよ、彼の場合は。
ああいうヒロインだからこそ、対比であそこまでジェレミーのバックボーンに辛い設定を持ってこられるんだろうけど・・・彼の家族運の無さを考慮すればする程に、ぬるま湯育ちのルーシーに対して厳しくなっちゃうわ私(^^;
彼女の屈託のないところとか、裏表のないところがジェレミーにとっては陽だまりのように感じるのでしょうが、ちょっと安易な気がしないでもないのは、やはり新人作家ゆえかしらん(小声)。
まぁ、ジェレミーじゃなくても惚れりゃ痘痕も笑窪なんだろうでしょうがね(^^ゞ

そんな両極端の評価を主人公たちに出してしまったこの作品ですが、まー、脇役もどう評していいのやら。
次回ヒロインらしいソフィアさんも、妄想癖暴走の面白おかしい配線違いの美人という設定にしたかったんでしょうが、実生活描写もろくすっぽない状態のまま裏打ちがないから薄っぺらーっ!(^^;
そんなソフィアさんとルーシーが奇妙な友情を育むという展開は、もはや失笑レベルに近付く一方で(笑)。
トビーも自己中心的で、全然魅力的じゃないし(ま、初恋の相手としては鉄板だったからいいのか。笑)、ルーシーの兄ヘンリーに至っては「この人、分裂症じゃないのかしら?(^^;;;;」と心配になるぐらいキャラクター造詣が不安定で、何が言いたいのか、何がしたいのか分からない・・・そりゃあ、嫁も最新の妊娠をこの人に伝えるのを遅らせる気持ちも理解出来るかも。言ったら頓珍漢でうっとおしそうだし(爆)。
作者は、このヘンリーをどうしたかったのか、今だ解せませんww

そんなこんなで、魅力ある脇役にも恵まれなかったとしか言い様のない1冊でしたが(おいおい)、ヒーローのみで読みきりました(爆)。
新人作家らしからぬ上手い文章運びとか、話の持っていき方とか随所に見えるんだが、いかんせんキャラ造詣に安定性がなくって、そのせいでせっかくのストーリーが振り回されている感じが否めない。
続編になったら、少しは落ち着いてるのかな・・・評価はそっちのが断然高いし。
新刊でなく、落ち待ちで確認するか、というワケで、この時点で今回の本のことのさん評価がおのずと知れますなww

別に、慌てて新刊買いしなくてもいいよ、この本 > 直球ど真ん中すぎます(爆)

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