ことのさんがずっと通っている本屋さんがある。
地元の本屋さんで、小学生の時に開店して以来、ずっと通っている本屋さんだ。
店長さんがとてもステキな物腰のやんわりした方で、いつも笑顔でカウンターにいるお店。
なかなか地方の個人書店では、取次からの配本事情も良くないのでネット書店購入がメインになっているとはいえ、雑誌の定期購読、定番の本、ネットの引取り、あと図書カードの消化もe-hon経由で注文して必ずこのお店に指定していた。

そんな本屋さんが、今月いっぱいでお店をたたまれる事になった。
この活字離れのご時勢、雑誌なんかもどんどん休刊が進む状況の中、仕方ないといったらそれまでなんだろうが、どうもここだけは別だ。

初めて自分のお金で買った本の思い出にはじまる、「はじめての本」の思い出が殆どこのお店に繋がっているからだ。
今のことのさんのサッカー好きを決定付けた『キャプテン翼』のコミックスを買ったのもこの店なら、朝日ソノラマから当時出ていた『機動戦士ガンダム』の小説版を買ったのもこの店。
生まれてはじめて、学習雑誌以外の本を自分で定期購読したのもこの店なら、初めて映画の本を買ったのもこの店。
先日アニバーサリーを迎えた『Newtype』創刊号を買ったのもこの店なら、TOKIOやKinKi目当てにアイドル雑誌大人買いをしたのもこの店。
そして、初めてハーレクインを買ったのもこの店だった。
忘れもしない、雑誌コーナーの角っこのところに専用ラックがあって、そこにあったハーレクインの新刊をどれにしようかな、とドキドキしながら選びに選んで、パトリシア・ウィルソンのキャンバス地のRをレジに持っていったのがついこの前のように思えてならない。
ピンク色の、バーバラ・カートランド・ロマンスをいつも月末に買いに行って、そこでウッディウィスの『冬のバラ』を見つけたのもそうだ。
もう、20年ぐらい前の話だというのに、鮮明に覚えている。

実際、ことのさんのあらゆるジャンルの蔵書のかなりの割合のものが、あのお店経由でウチにやってきたものである。
雑誌は残してはいないものも多いが、スクラップやファイリングしているものは殆どがあの店で買ったものだ。
どこの店で買っても本は本なんだが、それでも決してこのお店と縁を切ろうとは思わなかった。
何をおいても最後に戻ってくるのは、絶対このお店だったからだ。
だから、必ず月二回以上は行って、何かしらを買って、を20数年続けた。

そんなお店だが、先日、閉店の連絡を頂く事になってしまった。
今日、最後の定期購読の雑誌を引き取りに行ったら、いつもは店の奥にいらっしゃる店長さんが出てきて下さった。
小学生の時に見上げていた店長さんは、もうすっかり白髪で、えらく小さく見えた。
そして私は、そんな店長さんをぐーんと見下ろすぐらい育ちきった大人になっていた。
それでも仕事に疲れてても、何をおいても本を求め、ここに本を買いに来る、そこだけは変わらなかった。

少しお話をしていて、店長さんがこう仰った瞬間、泣きそうになった。
「ずーっと開店した時からこのお店を可愛がってくれてありがとうね、●さん」
残念すぎます。
いつかこの日がくるとは思っていたけど、まだ心の準備が出来てませんでした、ことのさんには・・・。
何か、もう、二度とリアル書店では定期購読とか出来そうにないです・・・唯一無二のお店だったんです、本当に。

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