購入したまま、読むチャンスを逃していた1冊なのだが、気候がミステリやサスペンス作品を求めたくなる秋、という事でこの「Iシリーズ」の1冊目を手にしてみたら・・・あらら。

すごいお得な拾い物してしまった気分!
面白かったのよ、かーなーり!!

何というか、サスペンスとロマンスの度合いがこんなにイーブンで、それでいてどっちつかずになっていないって凄くないかい?
それは多分、作者のパメラ・クレアが元々、事件記者の経験があり、現在も地元週刊紙の編集に関わっているというのが根底にあるんでしょうが。
しかも彼女はこちらの職業でも何度も賞を取っている本格派。本文のあのリアリティさは納得、なのである(ダイ●ナ・パーマーの職歴「新聞記者」は本文読んでる限り怪しいが。爆)
職場のハラスメント、シングルマザーの葛藤、それでも自分の実力に、そして仕事に誇りを持って真摯に事件に対峙するこの事件記者ヒロイン、巷のロマンス小説でヒロインを語る際によく使われる「頑な」というのとは一線を画している。
頑固、そう。誇り高き頑固さなのだ。
そして、仕事と育児を両立させるが故のジレンマに胸を掻き毟られるような描写の数々。
きれいごとはない。ガチゆえに、あそこまで書き込んだこの作者に拍手。
特に実際に両立していらっしゃる読者に読んでもらうべきかな。

事件そのものも恐ろしくリアリティで、それでいて身近。
環境問題をベースに、企業による汚染物質違法投棄、職員による企業内腐敗の内部告発、政界を巻き込んだ汚職・・・と、とにかく、地に足が着いているネタでひたすら精神的に攻めてくる。
とにかく上手いんです。上手すぎるぐらい。
上滑りな事件描写でなく、井戸水だったり、普段乗っているマイカーや自宅の外装の塗装の剥げだったり・・・ひたひたと日常生活を絡めて事件を読者に提示してくるから倍怖い。
ヒーローは上院議員なのだが、こちらの議会や職務描写も細かいところまで攻め込んでいる。マスコミあがりの作家の持っているスキルが存分に活かされているのが分かる。

てか、このヒーロー・・・この上院議員のリース、この彼だけでもロマンス読みとしては読む価値があると断言するわ!
何というか、ひっさびさに巡り合えました・・・こんなに真摯に仕事に、家族に、恋愛に全力投球するキャラに(^^ゞ
だって、はじめてかもよ!!
政治家になった理由が「教師時代(社会教師)、生徒たちに言った事を実践する為に」とかいう曲がりもへったくれもない真っ白で無垢でキレイな理由な人!
目からウロコもいいトコ!!
彼が政界を引退するとしても、その理由は、ロマンスヒーロー(政治家編)によくある「家族との時間を大事にしたいから」等ではない。
「今の政治家が腐敗しているなら、これから政治家を目指す若者たちに議会の意味や倫理について教えるのが解決の道。だから教職に戻る。金や権力はいらん」なのだ。
ヒロインであるカーラが、理想主義者とからかうが本当にまっすぐすぎてまぶしいぐらい(^^ゞ
さりげなくすごくないですかね。
つまりは政治家やってても家族は大事に出来る、って自信の裏返しだものねぇ・・・他の政治家ヒーロー、形無し(^^ゞ
またこの彼、料理上手、子供好き、動物にも好かれ、挙句自力で家を建てたりベッドを作ったりと・・・えーっと、オールマイティ?!(^^ゞ
エッチもすごくてイケメンで、とどめにメロメロくんで彼女を甘やかす甘やかす・・・何か、巷のサスペンス抜きの正統派ロマンスのヒーローが霞みます(笑)。
完璧クンかと思ったら、彼女の事が気になって鬱々したり、悩んだりと乙女系思考だったりして、そんなところがまた確信犯というか(^^;;

サスペンス部分も骨太で秀逸、ロマンス部分は直球ど真ん中。
そしてどっちも半端なく終わらせている。
長々と書かなくても、このボリュームでここまで詰め込めて、どっちつかずにならず、悪人は素晴らしく悪人というテンプレも盛り込める。
何より広げた風呂敷を上手にたためるというロマサスのお手本のような1冊。
本当に良い拾い物をした!
Iシリーズ、2冊目も翻訳決まっている、とあのあとがきを解釈していいのかしら?
だとしたら嬉しい!絶対に読みたいわ!!

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