ロレッタ・チェイスの新刊、読了~♪
いや、予想以上の面白さに読み終えるのが勿体なかった(笑)。

ストーリーは、アホ極めたる弟バーティ(こんなに痛快な天然アホキャラは見た事ない。別の意味で感動したわ。爆)が悪名高きデイン侯爵の元で放蕩の限りを尽くして身を持ち崩しているとの報を受けた、准男爵令嬢にてバーティの姉ジェシカがパリに乗り込んでいくというものでして。
そこからはボーイ・ミーツ・ガールもの・・・と思いきや、チェイスに限ってそんな普通の展開はなかった(笑)。
もう、ここからはあれやこれやといい意味で予想を裏切る設定と展開で息つく暇もない(笑)。

男勝りの知的美女ジェシカと、自分の醜い容姿にコンプレックスを持つデイン侯爵セバスチャン・・・これがまたどちらもロマンス小説史上屈指の名キャラ!
弟と従弟たちに囲まれて育ったジェシカ、何と言うか、竹を割ったが如くの清々しいまでの姐御っぷりなのだ!
姐御系キャラに滅法弱いことのさん、もうこのジェシカにメロメロよ!
弁が立って、腕も立って、しかもシャレがきく茶目っ気に溢れている。そして何よりも、あの全てを包み込んでしまう懐の大きな母性のかたまりっぷりは素晴らしい。
悪名高い行状の裏側で、今だ愛を求めて彷徨っているセバスチャンをどーんっ!と受け止めて子供をあやすように噛んで含めて調教しつつ(笑)愛してゆく様は、目からウロコだわ。
セバスチャン本人も言うように、自分以上にセバスチャンを理解し、信用している筋の通り方がまたかっこいい(ポッ)。
セバスチャンの庶子ドミニクに対する思いやりや言動は、まるで救われない幼少時代のセバスチャンの魂を洗うが如くで、奥深い。
・・・もはやアネキを通り越してアニキってカンジもするのが、最後の悪党(♂)をボッコボコにする場面だが(爆)。

対するデイン侯爵セバスチャンだが・・・どうしよう。
こんなヘタレで乙女系でナイーヴななツボキャラ、久々だわ(照)。
世間の評判の暴走を増長するが如くの言動と外見、の割に非常にヘタレでキタ!キタコレ!!
でも「醜い外見」っていうのは、物は言い様だよね。
つまりは、余りにアングロサクソンなイングランド貴族社会の中で、生粋のイタリア貴族の血を受け継いだ造詣のセバスチャンが「異質」だっただけで。
イングランド人の中では大きすぎて不恰好に目立ってしまう外見なだけで。
そんなコンプレックスにがんじがらめになって、親の愛情も知らずに、己の手で這い蹲って生きてきた彼を、何ともふんわりとジェシカが包み込むんだよね。
で、呪いを解くかごとくのたまう。
「メディチ家の御曹司の再来のような顔」「ローマの神のような肉体」など、とにかくマシンガンのようにとうとうとまくしたてる(^^ゞ
セバスチャン本人は、きっと彼女は頭の配線が変なんだ、とか言ってて何ちゅーか、ボケとツッコミというか(笑)。
恋は盲目とはよく言ったもんだが、この勢いは京極堂の憑き物落としに匹敵する威力なのは、物語を読んでもらえば明らかで。
大きな体の中に、捨てられた子供のままの悲しい傷ついた心を持っている彼が、不器用にジェシカとの絆を深めていく様が・・・感動的に書かれているのかと思ったら、これがまたクックッと笑いが洩れずにはいられないユーモアが絡めてあって、その按配は抜群!

てか、ここまで長々とセバスチャンの事を書いたが、要するに、ことのニーズなところはこれに尽きた。
シャレもわかる頭の回転が速いくせしてビミョーにヘタレな大型ワンコ属性(爆)

ああ、何か感動的なあらゆる場面が、この一行で台無し(笑)。

変にカマトトぶったヒステリックなインテリ女でない妙齢ヒロインなど足元にも及ばない痛快ヒロインと、その彼女が何度もハグしたくてたまらない衝動に駆られたセンシティヴで不器用なヒーローの一風変わったロマンスでした。
この厚みで、こんなに全てをまとめてしまえるその筆力、キャラクターの配置の妙さ、ロマンスと人間描写の按配、文句なし。
読者に対し、一部万民向けではない設定(セバスチャンの庶子に対する扱い他)など何のその。一発芸も多々あって拍手喝采なのだ。
ことのさん的に、全てにおいてパーフェクトの1冊。
姐御、ついて行きやす!(爆)

+余談+
どうしても、読んでいるとセバスチャンの従者の名前が引っかかるんですが・・・「フェルプス」(爆)。

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