ISBN:4596308284 新書 森 香夏子 ハーレクイン 2007/09 ¥700

チェリー・アデアの新刊にて、彼女の作家デビュー作、読了(^^)

T-FLACものとしても幻の一作目というか、まぁ、この時点で彼女の中ではアンチ・テロ集団T-FLACというのはしっかり出来ていて、シリーズロマンスの中で書けなかった分をシングルタイトルで書く事になった、という事ね。

実際読んでみて、T-FLACものの雛型はこの時点でしっかり出来ているのだ。
でも、そこはやっぱりHQコードというか、ヒロインのトリーなんてテロリストに捕まって拷問されたにも関わらず、骨折程度で解放されているあたりはご都合主義+楽観主義というか(^^ゞ
しかし、これがテンプテーション原書から出ていたという事を考えると、本当にあのシリーズは懐深いものだったと今更ながらにしみじみ思うわ(笑)。
今なら確実にイントリーグから出される内容なのに、これが発表された当時は受け皿がしっかりしていなくて迷走した、とうかなんちゅーか。
ここで、この1冊でしっかり彼女の方向性を北米HQが読んでいたなら、あのT-FLACシリーズは今頃、日本ではシルエット・ラブストリームの看板シリーズになっていたかもしれない。
逃がした魚は大きい、とはよく言ったもんだ。
いい作家を育てるも逃がすも、受け皿次第、という事だな。

まぁ、そんな話はさておき。
いやー、このボリュームでよくぞここまで書いた!(笑)
いつもなら、もっとページ数をかけるヒロインのトリー、ヒーローのマークのバックボーンもコンパクトにまとめて駆け足気味とはいえうまかった。
マークの死んだ恋人で二重スパイだった女性に関するところも、そつなくまとまっていたかな。
もっともマークの相棒にて、トリーの双子の兄アレックスのところは・・・ご、強引だよな。
トリーとの双子の間のテレパシーで全部済ませるのか!(爆)
あそこだけは苦笑するしかなかったというか(^^ゞ

これを先に、そこからランダムハウス講談社から出ているT-FLACシリーズを読むより、はからずも逆の順番になったからこそ「これがルーツなのか」というスタンスで気楽に読めたというのが本音。
最初に読まなくてよかった、というのも変な話か。
つうか、本当にこの1冊はプロトタイプ・・・アデアが書きたかったものの「原型」なのだ。
キャラや小道具の設定のつたなさ、とんがったところとかですらファンバカなんで愛おしいと思うんだけど(笑)。
まぁ、そんなところですら勢いで読ませてしまうんだから、これは拍手ものである。
だって、絶対にこのマークのある意味でいう余裕の無さなんて、アデアのシングルタイトルのヒーローじゃあ、ありえないじゃないですか(爆)。
何箇所かスリッパで叩きたい場面もあったりするし(笑)。
あと、長編ならあのベルトのくだりをあんなにあっさり流したりしないですって!
ページと行数が許すなら、オタクな「ブリキくん」が嬉々と説明してくれるだろうに・・・とか思ってしまうし。ああ、惜しい(笑)。

総括としてはホットなラブシーン、スピーディーなサスペンス部分、へこたれないヒロイン、久し振りにシリーズロマンスで「ロマサス」というものを堪能させてもらいました(^^)

さて。これでやっとT-FLACの空白が埋まったぞ(笑)。
あのラストの後、本当に引退したらしい「ファントム」が仕事同様にダーリンとして優秀なのは、T-FLAC設定にて確認出来るかと。
子沢山で牧場で幸せに暮らしましたとさ〜、となるのね(笑)。

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