レベッカ・ウインターズの新刊、読了。

彼女の作品というのは、いつも他の作家が避けるような設定やテーマを扱う事があり、それをまた上手にこのボリュームに納めてくるもんだから安心して読めるのである。

が、今回は作家凶作競作という、足枷が彼女の達筆さを襲った!ダメージポイント80!!(ゲームかよ。笑)
いや、ちなみにその部分とは、ヒロインであるレイチェルの家族に関する描写あれこれ。
今回は、双子の姉との確執と和解、という部分は、レイチェルというキャラクターを作っている要素の中ではかなりのウエイトを占めている。
しかし姉レベッカについての描写や何やは細かく書けないし(今後のヒロインだからでしょうねぇ)、他の作家さんへの今後の兼ね合いもあって、残り家族についても何だか切れ味悪〜い鋏の如く。
作品がギザギザってささくれてしまった印象が否めない。
これだから、作家競作は「凶作」になる可能性が高いのだわよ・・・。
まぁ、そこは達者なウインターズは余命いくばくもない祖父をレイチェルの傍に配して、この巻だけでのオチをつけるべくあれやこれやと設定をくっているのだが。

で、今回のウインターズらしい、他の作家が避けそうな設定。
ヒーローであるリュクの側にそれがあった。
彼の元・妻が「植物人間状態」という設定でした・・・これがまた、何ともどうしようもないぐらいのもどかしさで書き上げられていたりするんだな。
生命維持装置を外す、外さないで溝が深まる家族や友人・・・とにかく、本当に読んでいる方ももどかしい。
その「もどかしさ」が狙いなのは分かっているのに、まんまとしてやられている読者のことのさん(^^;
ああ、うまいったら。

お互い、一目見た時から恋に落ちたにも関わらず、リュクが過去に、罪悪感に囚われていて、何とも前に進まない。
もっとも罪悪感の為に、家族とぎくしゃくして自分の生活にも影響していたのはレイチェルも同じ。
こんな、割れ鍋に綴じ蓋な二人なんだけどね。

延々と続くかと思った事情は、あっけなく幕を閉じる。
しかし、そこにロマンス以上の物悲しさを感じるような描写をしてくれるものだから、ウインターズにはやられっぱなしだわ(^^;

読み終わって、ほんわかという本ではない。
でも、ちょっと久し振りに「イマージュ」らしい、ホットだ何だというものを越えた情緒の本を読んだ、って感じでした。

・・・競作でなければもっとよかったんだけど(本音)

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