ISBN:4812430283 文庫 村山 美雪 竹書房 ¥860

ラズベリーブックスの創刊ラインナップの2冊のもう片方、大好きなジェイン・アン・クレンツの新刊読了(^^)

これを読んでまず思ったのが、あの独特のクレンツ節の確立する前に書かれた昔の作品らしいなぁ、というものでした。
どちらかというと、ステファニー・ジェイムズ名義の彼女の作品に近い感じです。
大好きな『ロマンシング・ドリーム』を彷彿させてくれたかな?
うん、まさにあんな感じ。
でもあそこまでキャラはとんがってませんが(笑)。
クレンツ作品に、今まで翻訳された文庫で躓いた人にこそ読んで欲しい1冊かも。
あのクセあるキャラクターや、独特の「間」がなく、とんがった感じもなく、スムーズに展開していく作品です。

謎の自称エンジニアの男性ジェドと「友人以上恋人未満」のSF作家エイミー。
彼が怪我をして帰宅した時から、少しづつ二人の距離が縮まると共に、エイミーの過去に起こった「事件」、ジェドの「正体」が明らかになる・・・等、非常にロマンスとして王道且つテンポよくてよいのだ〜。
サスペンスとしては弱いけど、この作品ではあくまで添え物程度と解釈してもいいかも。
しかし、そこはやはりクレンツなので、トリッキー気味な部分もあるんですけどね。
SF作家になるべくしてなったエイミーの「想像力」というか、「妄想力」を通して描かれる、美しい珊瑚礁の島での「事件」は、書き方によっては凡作まっしぐらなものなんですが、これはうまかった。
読みながら「あ、これはうまい」と感心しちゃったな。
エイミーの悪夢の描写が、そのまま不気味さ、切迫感を醸し出していてね。

クレンツのヒーローって、ちょっと妙なテンポのキャラが多い中、このジェドは表の顔はエンジニア、裏の顔は諜報員、オフにはひっそり美しい鳥籠を作る・・・という、彼女にしては王道系ヒーロー?(笑)
でも、やっぱりあの茶目っ気や、独占欲爆裂なところはらしいのよね〜(笑)。
デキる男なんだけど、もう駄々っ子みたいなところとか(^^ゞ
対するエイミーは、あの不器用さやちょっとテンポの変わっている美人さんなあたりは、クレンツのヒロイン像に沿っているのよね(^^)
まぁ、でもこの二人・・・割れ鍋に綴じ蓋でした。
しかしラブラブカップルばかりのクレンツ作品の中でも、この二人は群を抜いてましたな(笑)。

懐かしいような、それでいて新しいようなクレンツの1冊。
ここ最近読んだ邦訳クレンツの中では、クイックの隻眼くんに匹敵のレベルで楽しめました(^^)
近年のクレンツ/クイック新作、どうもコンパクトにまとまりすぎて物足りないので、こういう昔〜の作品を発掘翻訳してもらえるとありがたいですな。
来月のライムブックスの新刊は、この作品とは打って変わっての「クレンツ節」炸裂の1冊。
しかし、その「クレンツ節」ジャンキーのワタクシなので、今回とは別の意味で楽しみなのよね(^^)

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